もし、わが子が精神的につらい状況に陥ってしまったとしたら、助けてあげたい、と思うものです。けれどそれがかなわないときでも、その子を支えてくれるもののひとつに、食卓の思い出があるのをご存知ですか。
『ナショナルジオグラフィック 日本版』(2014年12月号)の、「食べる」は喜びの源、という特集記事の中に、こんな一文があります。
食べ物の思い出は愛情と結びつき、生涯にわたって心の支えとなる。
ヒプノセラピストの筆者のところへは、トラウマに長年苦しめられてきた方々も見えます。たとえどこにも出口がないように思えても、催眠で記憶をさかのぼるうちに、ふっと出口につながる希望の光が差しこんでくることがあります。子供時代に家族で囲んだなごやかな食卓の場面が、その方の脳裏によみがえったときです。
お母さんがご飯をよそってくれる、お父さんがおかずをとってくれる、家族がそろい、穏やかな表情で湯気のたつ食卓を囲んでいる……。ほんとうに何気ない食事風景です。
しかし、大人になって、しかも苦しい状況に直面しているなかでその記憶にふれ、催眠という手段で再体験していくと、本人の想像をはるかに超えた懐かしさとうれしさがこみ上げてきます。子供の頃はほとんど意識したこともなかった日常が、実は何よりもうれしくて大切な記憶として潜在意識には刻みこまれているのです。
食卓の思い出が奇跡のお守りになる
さりげないけれど強力な、こうした幸せな食卓の記憶は、トラウマを超えていこうとする力を確実に取り戻させてくれます。そこに空気のように流れていた両親の愛情をはじめて実感し、うれしいというプラスの感情が強く揺さぶられて、折れかかっていた心を支えてくれるのです。
いかがでしたか。毎日の食卓は、わが子の身体だけでなく心までをも、一生涯守ってくれる奇跡のお守りになり得るのです。
特別な献立などいりません。いつものようにわが子の笑顔を思い浮かべながら、楽しくお食事を作ってくださいね。
※参考 『ナショナルジオグラフィック日本版』(2014年12月号)